弱味

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「本当に、相変わらず」 専務室を出ると、滝沢さんは独り言のようにそう笑っていた。 「滝沢さん、なんで川邊専務と仲が悪くなったんですか?」 だって。 滝沢さん、凄く川邊専務の事が好きそうなのに。 「それは言えないけど、悪いのは俺」 それは聞かなくても、想像が付いた。 怖いと思う川邊専務だけど、あの人は多分とても良い人だと思う。 「俺と眞山社長はわりと似てるんだ。 似てるから分かるけど。 きっと、あの人は傷付きやすい人だと思う」 傷付きやすい、か。 私には眞山社長はそんな風に見えなかったけど。 「自分が傷付きたくないから、 先に相手を傷付けてしまう」 その後、滝沢さんとは特に会話はなく、 エントランス迄見送った。 「やっぱり、滝沢さんカッコいいな」 私が受付に戻ると、神山さんは滝沢さんの後ろ姿をうっとりと見ていた。 「滝沢さんの奥さんって、昔この会社に居たんですよね? 眞山社長の秘書の一人だったって」 「そうそう。当事話題だった」 「どんな人なんですか?」 何故か、滝沢さんだけじゃなく、眞山社長の事迄思い出す。 眞山社長とも付き合っていたと聞いたからか。 「滝沢さんと結婚したって聞いてから気にして見たけど。 わりと、普通の人だったかな? 普通よりかは綺麗かもしれないけど。 同じ眞山社長の秘書なら、なんで奥村さんじゃないのだろうって思ったな。 まあ、でも、奥村さんは眞山社長のアレだからねぇ」 その滝沢さんの奥さんも、眞山社長のアレだったみたいだけど。 「それより、昨日も今日も、なんで千花が案内役に?」 そう訊かれ、 「なんででしょうか?」 そう、誤魔化すように笑った。 その後、少し追及されたけど、特にそれ以上は疑われる事はなかった。
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