弱味

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こんな形だけど、以前から可愛いと憧れていた奥村さんと接近出来る事に、少し心が弾む。 エレベーターホールで、エレベーターを待っている時。 「眞山から聞きました。 辻山さんと結婚する…もう入籍は済ませたと」 奥村さんにそう言われ、この人と眞山社長との関係を思い出した。 「えっと、あの…ごめんなさい」 そう謝る私に、奥村さんはキョトンとしていて。 私より背の低い奥村さんは、 そんな表情も含めて小動物のように可愛い。 「なんで謝るの…と思ったけど。 新入社員の辻山さんにも、噂は回っているんですね。 私が眞山の、女なのだと」 そう言われ、それを否定した方がいいのか迷うけど、答えが出なくて。 「ごめんなさい」 謝って、しまう。 「その噂は、事実無根だと言いたい所なのですけど。 若い頃、眞山とは少し付き合っていた時期が有りました。 すぐに別れたんですけど」 「昔…ですか?」 「はい。別れてからの十数年。 眞山とは本当にいい友人です。 勿論、私達が触れ合うような事はしていませんよ。 まあ、大した学歴のない私がこんな大会社にこうして就職出来ているのだから。 そうやって、眞山との関係を疑われるのは、仕方ない事だと割りきってます」 奥村さんが嘘を付いてるとは思わないけど。 まだ信じ切れない私がいる。
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