弱味

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「後、ほかにも聞いたのですが。 眞山社長は、奥村さんと別の秘書とも、以前関係があったと…」 昨日、滝沢さんが言っていたのを思い出した。 滝沢さんの奥さんは眞山社長の元秘書で、そういう関係だったと。 「気になりますか?」 少し笑いながら訊かれ、まるで私が妬いて探りを入れているみたいだ、と思った。 「いえ。気になりません」 「冗談です。 辻山さんと眞山との結婚が、恋愛感情のない、ワケアリなのは眞山本人から聞いてますから」 そうか。 だから、この人は眞山社長と結婚する私に、 昔、眞山社長と交際していた事も話したんだ。 私に眞山社長に対する気持ちがない事を知っているから。 普通なら、現在の妻にそんな事を話さない。 そして、眞山社長はこの奥村さんにとても心を開いているのだろう。 そうやって、色々と話す辺り。 「今回の眞山との結婚。 辻山さんには同情しますけど。 私は眞山とは本当に友人で。 そんな私から見て、彼は根はとても良い人だから、きっと、辻山さんの事も、いつか大切にすると思います」 「そうでしょうか?」 「確かに、先程辻山さんが訊いたように、眞山は女癖が悪くて…。 秘書に手を出しているのも、三人程見た事有ります。 その辺り、身を固めたら慎むと思います」 そうなんだ…と思うと同時に。 なんだか、その自分の秘書に手を出している、という部分に引っ掛かる。 眞山社長なら遊ぶ相手に困らないはずなのに。 そうやって、わざわざ自分の秘書を弄んで。 なんだか、自分の父親を真似しているみたいで。 そして、"秘書"という女性に、復讐しているみたい。 「眞山は、自分の父親を模倣しているみたいですよね」 奥村さんも、私と同じような事を思っているんだな。 そして、この人は本当に眞山社長から色々と聞いているんだ。 眞山社長の父親がそうやって、私の母親である秘書に手を出している事とかも。
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