子作り

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「私、父親が誰か知らないの…。 綾知さんも私の戸籍見たと思うけど、父親の欄は空白で…。 だけど…」 幼い頃、綾知さんのお父さんが私の父親だと思っていた。 私にとても優しかった、眞山のおじさん。 「もしかして、千花は俺の父親が、自分の父親じゃないかと思ってる?」 綾知さんは足を止め、こちらに視線を向けた。 綾知さんは察しがいいのか、全てを言わなくても、私が言いたい事を分かってくれた。 「もしかしたら…」 もしかしたら、と怖くて、その先の言葉を口に出せない。 「もしそうなら、俺と千花は兄妹って事か」 もし、本当にそうなら、兄妹で結婚なんて…。 「もし、私達に血の繋がりがあるのなら、子供なんか絶対に作れない!」 血が濃くなるのは、いけない。 それに、健康で産まれて来るか分からない。 「千花の血液型は、ABだろ?」 なんで、私の血液型を知っているのか、と思うけど、今はそれはどうでもいいのかもしれない。 「俺の父親は、O型」 そう言われ、一瞬どういう意味?と考えたが。 そうか。 O型からは、絶対にAB型は産まれない。 「千花の父親は、俺の父親ではない人だよ」 なんだろう。 なんとなくだけど、この人は私の本当の父親が誰なのか知ってるじゃないか、と思った。 血液型だけの事で、否定しているわけではなさそう。 「それより、いい方向に話が流れたから言うけど。 俺達、子供を作らないといけないから」 その言葉に、入籍したあの日、 この人に抱かれた事を思い出した。 言っていたように、中で出される事はなかったけど。 わざと時間を掛けて、私の中に入れていた。 それを思い出すと、やはりこの人は私が憎いんだ。 あの時、怖がって泣いている私を見ながら、そうやって楽しんでいたから。
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