子作り

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招かれた客人の男性には、見覚えがあった。 うちの会社で働いている、確か、営業部一課の課長。 「倉持、急に呼び出して、ごめん」 そうだ。 くらもち、さんだ。 「本当ですよ。社長」 倉持さんもそう笑っていて。 その親密そうな、雰囲気。 「倉持は、俺と同じ大学の一つ後輩で。 元々は、NANTENで一緒に働いてたんだけど。 こっちの会社に来る際に、連れて来た」 それは私が入社するよりも前の事だから、特に理解する必要はないのかもしれないけど。 ただ、倉持さんとは昔から仲良くしていると、言いたいのだろう。 「眞山さんって、昔から思ってたけど、変ですよね?」 先程みたいに、もう社長とは呼んでいない。 「お前だって、人の事言えないだろ? 今日もこうやって来て」 話が見えないけど、嫌な予感しかしない。 「そりゃあ、受付の辻山千花とヤれるんだから、 喜んで来るに決まってんじゃないですか。 ああ、もう、眞山千花でしたっけ?」 一体、この人は何言ってるの? 「篠宮君の他にも、千花の事いいと思っていたやつは、 うちの会社けっこう居るみたいだよ。 倉持のこれは、ヤりたいだけだけど」 「いや、付き合えるなら、付き合いたいですよ」 そう舐めるように見られて、嫌悪感が湧く。 倉持さんだけじゃなく、綾知さんにも。 「俺が、千花を結婚相手に選んだのは。 さっきも言ったように、子供を作る為。 けど、それは俺の本当の子供じゃない」 「意味…分からない…」 綾知さんの言ってる言葉の意味を理解するのを、頭が拒否している。
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