子作り

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「だから、俺はこの世に自分の血を受け継いだ子供が生まれるのが嫌なんだよ。 自分の分身みたいで気持ち悪い。 だけど、俺の立場的に、跡取りが出来ないのも困る」 自分の血を分けた子供が嫌だとか、 だけど、跡取りは必要だとか、一体なんなの? 「こういうの、托卵っていうの? まあ、どうでもいいけど。 とにかく、千花にはこの倉持の子供を、表向きには俺の子供として産んで貰うから」 この人、本当に頭がおかしいんじゃないだろうか? そんな事、まかり通ると思っているのか。 「だから、千花を結婚相手に、選んだ」 「え?」 「俺に弱味があって逆らえなくて。 ちょっとくらい雑に扱ってもいいか、って思う、憎い女」 それが、この人が私を結婚相手に選んだ理由。 「本当は、倉持の前に滝沢君にお願いしたんだよねぇ。 じゃあ、さすがにそれは、って鼻で笑われて」 あの弁護士の滝沢さん…。 「滝沢君の遺伝子なら、絶対産まれて来る子供は美形だろうし。 頭脳明晰…。 俺と同じO型だから、種としては完璧だったのに」 滝沢さんは、自分とこの人が似ていると言っていたけど。 全然、違う。 こんな事を考えて実行しようとしているこの人は、普通じゃない。 滝沢さんのように、断るのが普通。 「俺もO型で良かったですよね? 普通のやつは、こんな頼み聞かないですよ」 倉持さんも綾知さんと、同類。 頭がおかしい。 先程から、彼らのこだわるその血液型。 私がAB型で綾知さんがO型だから、 その組み合わせでは、絶対にAB型が産まれない。 もし、O型以外の人の子供ならば、 私からAB型が産まれて来るかもしれない。 「血液型は誤魔化せても、DNA検査したら、そんなのすぐにバレるよ? 綾知さんの子供じゃないって」 「すればだろ? 血液型と違って、DNAなんて調べる事なんて滅多にないだろ。 それに、それって、男がこれは本当に自分の子供かって調べるのが大半だろ? その点、俺は調べなくても、自分の子供じゃないって分かってんだからさ」 そう笑われて。 この人には、何を言っても通じないのだと思った。
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