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◇
その行為を終えると、倉持さんはさっさと衣服を整え、部屋から出て行った。
ベッドの上で、まだ裸のまま茫然とする私を、綾知さんはベッドに腰掛け見ている。
「後、もう少しそうしといて」
先程、私の腰の下に枕を置かれて、
その液体が流れ出さないようにされた。
自分の中に、よく知らない男の人の吐き出したものがまだ残っていて。
本当に、気持ち悪い。
「明日、早く帰って来るから」
そう言われ、顔だけ綾知さんに向ける。
「明日、引っ越し三時くらいからだろ?
四時迄には、帰って来るようにする」
明日、引っ越しするのは私だけだから、
べつにこの人が居なくても、問題はない。
私の荷物を、この人の家に運ぶだけ。
一応引っ越し業者に頼んだけど、大きな家具とかはないので、それほど大変ではないだろう。
「…明日、仕事なの?」
べつにどうでもいいのだけど、
そう問いかけてしまった。
「いや。美帆子の息子のサッカーの試合見に行くんだよ。
誘われて」
その、予想外の答えに、え、と声に出た。
「本当は、奥村さんの子供は綾知さんの子供なんじゃないの?」
奥村さんには否定されたけど、
そんな事を聞いたら、疑ってしまう。
「そんな言葉美帆子の耳に入ったら、怒るだろうな」
綾知さんは笑っていて。
実際、私は奥村さんに同じような事を言って、少し怒らせてしまった。
「奥村さんは、綾知さんの事、根は良い人だと言ってた。
だけど、私はそんな風に思えない」
今日の、この行為。
この人に良心的なものがあるのならば、
こんな酷い事なんて出来ない。
そこまで、母親とこの人の父親との不倫で、
憎まれているわけなんてない。
その不倫のせいで、綾知さんの両親が離婚したとかならともかく。
「さすがに、この事は美帆子には話してないよ。
他の男の子供を千花に産まそうとしているなんて。
知ったら、キレるだろうな」
そう言って笑っていて。
本当に、奥村さんは綾知さんの本性を分かっていないと、思った。
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