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ホットマシュマロミルクティーと冬の出会い
しんしんと降りしきる雪は外からの音を遮断し、店の中はしんと静まり返っていた。
黒猫のアルヴィン伯爵は、寒さに耐えきれず店の奥にある暖炉の前に陣取っている。
店主である紅もあまりの寒さに、お気に入りのホットマシュマロミルクティーを片手に暖炉の前で手記を見ていた。
昨日の夜から窓の外に降り積もる雪は、明け方には膝丈を越えるほどになっていた。
そのことに気づいた紅は手に持つ手記を閉じ、コートを着込み始める。
いつご縁が人を連れてくるか分からない。だから、常にドアは開けられるようにしている。それは、朝だろうが夜中だろうが、いつでもドアは開け放たれているのだ。
ドアノブは、冷えきっていて触るとわずかに痛みを感じる。わずかに躊躇った指先は次の瞬間には勢いよく、回していた。
「寒い......。」
吐く息は白く、雪は一向に止む気配がない。
紅は早速、店の前の雪をどかし始めた。
朝、通勤通学時間も合わさり外には多くの人が行き交っていた。
中には紅に気づき挨拶をする人もいた。
「紅さんおはようございます。今日は一段と寒いですね。」
「東雲さんおはようございます。足元滑るのでお気をつけてくださいね。」
「紅さんおはようございます。後で昼休みの間に雪かき手伝いに行きましょうか?」
「白粉さんおはようございます。それは助かりますが、しっかりご飯は食べてくださいね。」
「おはようございます、紅さん!
放課後にまたハニーアップルパンチ飲みに行ってもいいですかー。」
「咲希さんおはようございます。もちろん、いつでもお待ちしておりますよ。」
縁があったお客さんや、近所の商店の人達。多くの人々が紅に声をかけては各々の生活に戻っていく。
紅はこの時間が酷く好きで、愛おしく思ってた。
降り積もる雪は未だ止む気配がないが、紅の頬は紅潮していた。
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