ホットマシュマロミルクティーと冬の出会い

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お店前の雪をあらかた片付け終わったのは、10時をすぎる頃だった。 外は相も変わらず雪が降り続き、このままだとまた数時間後にはドアの前に白いカーペットができているだろう。天気予報では夜には止むようだが、空に浮かぶ雪雲は未だ黒く多くの水蒸気を含んでいることが分かる。 ひとまず紅は、店の中に入り悴んだ指を暖炉で温め始めた。頬と同じぐらい紅潮した指は、僅かにヒリヒリと痛み外がどれほど寒かったかを物語っている。 看板猫であるアルヴィン伯爵は呑気に欠伸をかいているが、紅が帰ってくるとすぐにトテトテとそばに寄ってきた。ずっと暖炉のそばで温まってたのだろう。その体はカイロのように温かかった。 紅もなにか紅茶を入れて温まろう、そう思いキッチンに向かおうとした。 その時だった。 ─カランコロン─ ドアベルが鳴り、ご縁の来店を合図した。 「いらっしゃいませ。カウンターのお席でよろしいでしょうか。」 ドアの前に立っていたのは、1人の子供だった。俯いて顔は見えないが、髪が長くスカートを履いていることから女の子だとひと目でわかる。女の子は小さく頷き、そのまま俯いたままカウンターの席の着いた。 近くで見るとよくわかるが、その黒髪はよく手入れがされていて紅と同じように間接照明で艶やかに照らされていた。肌は白く、腕もか細い。 紅は、どこかひとつ引っ掛かりがあった。 1度、どこかでこの少女とあったような。 「今日はどのような理由でこちらにおいでになられたのですか。」 ひとつ、紅が質問してみた。 何の変哲もない、ただの質問だった。そのはずだが、少女は首を傾げて少しばかり考えたあとこくりと頷くだけだった。 不思議に思い、紅はさらに話しかけてみた。 「今日は一段と寒いですね。」 こくり 「外の雪もさっき除雪したばかりなのですが、もう降り積もり始めてしまいました。」 こくり 何を言っても少女は、こくりと頷くだけ。 さてはて、変わったお客さんが紅茶の縁に乗ってやってきたことだ。 だが一体なんだろうか、このなにか引っかかるような、口に残る紅茶の渋みのような感覚は。 だけど、この感覚は嫌ではない。 「今、なにか温かい物をお作りしますね。」 少女はまた、こくりと頷いた。
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