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第一章・卒業式
春三月。
そう、春は別れの季節である。
そして、その時は中学三年生の五条夕莉にも、悲しい別れが訪れてしまった。
「ぅーーーーーーー」
「ちょっとゆうりぃ、何うなってんのよ?」
親友の杉崎結愛が、笑いながら声をかけて来る。
「だってぇ……」
「ああ、小泉くん、今日で見納めだもんね」
結愛がニヤニヤした。
「ぅううーーーーーー」
そう、今日は三年間通った、中学校の卒業式なのだ。
そしてそれは、夕莉が三年間片想いをしている、小泉凛斗との別れでもあった。
凛斗はバスケットボール部のエースで、その実力を買われて、全国制覇を何度もしている、県外の強豪校へスカウトされて進学し、寮生活を始めるのだ。
なので、地元の高校へと通うことになっている夕莉にとって、その姿は今日が見納めだった。
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