2002人が本棚に入れています
本棚に追加
春隆と再会して早くも2週間が経った。
早いなあなんて思う気持ちと、この2週間全てが夢なのだろうかと思う気持ちもあった。
けれど夢ではないと言われるように、春隆は毎日俺と春寧に会いに来てくれる。
というのも、毎日春隆は俺の家に泊まっているのだ。
早く一緒に暮らしたいと言われているけれどそうはいかず今の状態だ。
今日は土曜日だ。
何と今日は春隆の実家に行くことになっていた。
春隆には緊張しなくていいと言われたけれど緊張しないわけがない。
いつも以上にしっかりと身だしなみを整え、春寧にも綺麗な服を着せた。
じゃあ行こうかと言われて、俺は事前に買っておいた手土産を持って3人で家を出た。
緊張しながら車に揺られていると豪邸が見えてくる。
春寧がおおきいおうち!なんてはしゃいでいる横で実家まで立派なのか、いや当たり前かなんてぼんやり考える。
ガレージに車を停めて門をくぐる。
「ただいま」
玄関に入ると春隆のそんな言葉を聞いてか、春隆の両親と思しき男女が姿を現した。
実年齢は分からないがかなり若く見える。
俺は緊張を抑えて口を開こうとした、が。
「その子が肇くんと春寧ちゃん?初めましてえ〜、私春隆の母の奈緒です。こっちは父の隆彦さん。ずっと会えるの楽しみにしてたのよ〜」
気さくに話しかけられるから俺は口を開けたまま、声を出せずにいた。
春隆が止めてくれたおかげで奈緒さんはあらごめんなさいと言って口を閉じた。
「は、初めまして。瀬戸 肇と申します。この子は春寧と言います。これ、つまらない物なんですが…!」
言葉に詰まりそうになって、慌てて手に持っていた手土産を手渡した。
「あらあら、ご丁寧にありがとうねえ。春寧ちゃん、春隆の娘とは思えないくらい可愛いわねえ」
春寧に挨拶して、なんて促すと“こんにちはあ!”と元気よく言うから、ご両親の表情が柔らかくなったように見える。
遠慮なく上がりなさいと隆彦さんに言われて、お邪魔しますと言って家に上がる。
白を基調とした清潔感のある部屋はしっかりと掃除されている。
玄関が広い時点で家の中もすごいだろうと予想していたが、部屋も広い上に置かれた家具も見るからに高価なもので、これはかなりの豪邸だ。
「じゃあ、早速なんだけど肇くん。春隆抜きの3人でお話ししたいことがあるの」
「は、はい」
突然かけられた声に酷く緊張した。
何を言われるんだろうとか、やっぱり春隆とは別れろと言われたらどうしようとか、余計な不安が広がる。
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ」
そんな俺の様子に気づいてか、安心させるように春隆は俺の手を握った。
少しだけ緊張が解けた気がした。
ありがとうと言って春寧のことを頼んで、俺はお2人の後について部屋を出た。
最初のコメントを投稿しよう!