出逢い

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「はい、これ今月の分ね。お疲れ様」  茶色の封筒を受け取る。中には今月の給料が入っていた、これでまた暫く生きていける。嬉しいのか嬉しくないのかはイマイチ分からないけれど。  礼を言って軽く会釈して店を出た。というのも指名をいれてきた客が急にキャンセルしたからだ、もう今日はそのまま上がってしまった。  夕飯の食材でも買ってさっさと帰ろう、抑制剤のストックも少なくなっていた気もするから補充しよう。  近くのスーパーに向かっていた、そんな時だった。  甘い匂いがふわりと嗅覚を刺激した、気がした。自分のフェロモン?いいや違う、さっき抑制剤を服用したばかりだ。なら一体、何の__。 「…運命だ」  突然腕を掴まれた。だれだとその相手を見た、自分よりも大きい背丈と図体、冷たい表情だが整った顔立ちは見たことがない。このいい匂いは、香水だろうか。 「お前が俺の、運命だ」  発する言葉の意味はよく理解出来ない。何を言っているのかと睨みつけて言おうとした、そのとき。  ぐらりと視界が歪んで、身体に力が入らなくなる。身体が熱く、息が荒くなっていくのがわかる。まるで、ヒートの時みたいな__。  ここで、俺の記憶は途絶えてしまった。
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