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「なんだよ、あれ……」
全身を寒気が走り抜け、怯えた声が口から漏れた。
そのとき、その真っ黒いなにかが、ゆっくりと動き始めた。
まるで、Tさんの方を見上げるように。
声なんて、聞こえるはずがないのに。
「ひいっ!」
悲鳴をあげかけた、その瞬間だった。
「見るな!」
低い、祖父の声。驚いてそちらに目をやると、険しい顔つきをした祖父が、Tさんを見据えていた。祖父は、Tさんと窓の間に割り込むようにゆっくりと歩いてきて、それから庭を見下ろした後、
「あれは、見てはいけない存在だ……」
そう、言い放った。
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