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東北のある雪深い村出身の、Tさんという男性が聞かせてくれたお話です。
Tさんの家には、彼が幼い頃から一つの約束事があった。
それは、雪が降り積もる夜、雨戸の外で雪を踏む足音が聞こえても、けっして雨戸を開けて外を見てはいけない、というものである。
というのも、Tさんの家は山の麓にあり、鹿や猪、ときには熊などの獣が山から下りてきて庭を歩き回る、ということがあったそうだ。足音に誘われて雨戸を開ければ、その獣と遭遇してしまう危険がある。
そういう理由があり、この決まりごとを作ったのだと、Tさんの両親や、同居していた祖父母が説明してくれたという。
だが、果たしてそれは本当なのか?
そう疑ってしまう出来事が起こったのは、Tさんがまだ、中学生だった頃のことだ。
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