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中華料理屋を後にした後も、右京の興奮は冷めやらない様子だった。
見慣れた交番を通り過ぎようとしたとき、違和感を覚えて私は足を止めた。
「ちょ、ちょっと右京! これ見てよ!」
交番の前に掲示されていたのは、行方不明者の目撃情報を呼びかけるポスターだった。
そして、私たちはそのまま固まって動けなくなった。
行方不明者として掲載された写真に写っていたのは、まさにあの、おかっぱ頭をした天才少年だった。
情報欄に“岡清信くん、10歳”とある。
私は、弾かれたように交番内に突入した。
「だから、私たち、手がかりを知ってるんですって!」
尋常ならぬ私の剣幕に、交番に駐在していた涙ぼくろの警官はのけぞった。
「あの子は、付きまとわれていたんです。変な男に。いや、女かも。とにかく、そいつは首に悪魔の刺青がしてあるんです! 前にも言いませんでしたっけ!?」
「いやいや、近頃は首に刺青をした若者なんて腐るほどいるからねえ。もっとないの? 犯人を特定するような有力情報は」
右京が耳打ちする。
「“ほるすのしゅごしゃ”です。あの子はそう言ってました。犯人があの子のことをそう言ったんです。え、意味? 分かるわけないでしょう? それを調べるのが警察の仕事じゃないんですか?」
「あー、わかった、もういい。君の通報はここにちゃんと書いたから。うん、あとはこっちで処理するから、もう帰って…」
「処理ってなんですか、処理って。もしかしてその紙、シュレッダーで裁断するんじゃ……ちょ、ちょっと!」
右京に羽交い絞めにされて交番から引きずりだされた後も、私は興奮が収まらない。
「だめだわ、右京。日本の警察は全くあてにならない。これじゃ見つかるものも見つからないわ!」
「俺たちにも、できることがあるかもしれないな。」
突然の右京の前向きな発言に、私は雷に貫かれたような衝撃を覚えた。
「まさか、まさか、まさか……」
「ああ、時間がない。俺たちも出来るだけ手がかりを集めよう」
「ということは?」
「瑞希探偵、お前の出番だよ」
私は興奮で耳から煙を吹きそうになった。そして胸に固く決意する。
私が何としてでもあの天才少年を見つけだす。そして無事に連れ帰る!!
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