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神々の困惑
目を覚ますと、そこは廃屋のリビングだった。
私は捨て置かれた革製のソファに身を預けていた。
床に置かれたキャンプ用のランタンから発する黄色い光が、荒れ果てた室内をやさしく映し出している。
ガラスの割れた窓の外を見やると、すっかり日が暮れて漆黒の闇が覆っていた。
そして窓辺に佇む人影を認めて、私は湧き上がる怒りを抑えきれなかった。
「望月先生!! あの子をどこにやったんですか!」
勢いよく立ち上がろうとして、右の手首に激痛が走る。
確認すると、肘掛のアイアンのフレームと、右手首が手錠でしっかりと繋がれていた。
左隣には同じように右京が反対の手首を繋がれて座っていた。
私はとりあえず、右京が無事だったことに安堵した。
「あの子は……、救急隊によって病院に搬送された。衰弱はしているが、命に別状はないだろう」
無表情に言ってのける望月先生の開き直った態度に、私は頭に血が上る。
「よくもまあ、ぬけぬけと! あなたがこんなところに監禁したくせに! 今度はどこに連れて行ったのよ!」
「まあ、落ち着くんだ。一葉瑞希さん」
窓辺と反対側から声がして目を移す。気づかなかったが、そこにまた別の男がいた。
ランタンの光が映し出した男の顔を見て私は絶句する。
木箱を椅子代わりに、大股を開いて太々しく座っている男。
それは実田だった。
シオルーン秘密協会について数々の情報提供をしてくれた男は、裏で望月先生と繋がっていた!
「まさか、あなた達がグルだったとは…。一体、どいうことなの?」
私の戸惑いを前に実田が短く笑う。望月先生は無表情で窓の外に視線を向けている。
右京は…、ただ黙って眼前の実田を睨みつけていた。
実田が徐に口を開く。
「落ち着くんだ。これから、すべて順を追って説明しよう。」
実田は懐から煙草を取り出して火をつけると、深く吸い込んでから紫煙を吐き出した。
「我々の地球から遥か彼方。方角にして、いて座、天の川銀河の中心方向。彼らは今現在もこの太陽系に向かって、とんでもない速度で移動している」
「は?」
私は呆気にとられる。この人は何の話をしているの?
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