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「最後のひと押しは、あの警告の電話だ。俺は園田に、あの電話で時間の猶予が無いことを知らせようとした。思った通り、園田は一気に解決に至る鎖を引きずりだした。園田が清信君を発見するまで、俺たちは注意深くその後をつけていたんだ」
それから、望月先生はじっと私の目を見つめた。
射すくめられそうな視線に私はたじろぐ。
「一葉瑞希、花咲右京と知り合ったのはいつだ? どこでどうやって知り合い、今までどうやって過ごしてきた?」
突然の質問に私は眩暈がした。
右京との出会い……、あれは確か、私が中学生の時、いや、高校生だったかな……
私は激しく混乱し、動揺する。
思い出そうとすればするほど、詳細が記憶の濃霧の中に霞んでいくような感覚に捉われる。
あの当時は私もいじめに遭って精神を病んでいた。当時の記憶は曖昧だ。
だからと言って、右京が統合失調症の多重人格だなんてありえない。
ましてや、無意識にしろ、幼い子供を誘拐しただなんて。
だって……、これだけは確信を持って言える。
右京はずっとそばにいてくれた。
絶望の淵から私を救い出したのは、右京なんだから。
私にもう一度、生きる勇気を与えてくれたのは他の誰でもない。
右京ただ一人だ!!
「思い出せないだろう? そんな奴はいないんだ。花咲右京、そいつはお前の分身であり空想だ。お前が創り出したイマジナリーフレンドなんだよ」
「えっ?」
左隣に視線を移すと、いつのまにか右京の姿が消えてなくなって、埃の積もった革張りの座面だけがあった。
「さあ、帰ろう、現実の世界に戻ってくるんだ。園田歌男」
そう言うと、望月先生は私に手を差し出した。
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