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雨
次の日の朝、またお母さんが居なかった。
けれどこの日はお父さんに起こされた。
「すぐに病院に行くで。」
何が何か分からないまま車に乗せられ、またモヤモヤふわふわがやってきた。
病院に着くと前とは違う病室の前へ案内された。
そこにはおっちゃんはおらず、お母さんとお婆ちゃんの他に沢山の親戚が集まっていた。
「私達は済ませたから、あんたら行ってき。」
お母さんに背中を押され親戚達と一緒に中へ入る。
そこには前のおっちゃんは居なかった。
沢山のチューブが繋がれ、頭には包帯がぐるぐると巻かれていた。笑っていた口元は青く、おっちゃんではない『誰か』がそこに横たわっていた。
「ほら、あんたらも言葉かけたり。おっちゃん来たで。わかる?」
私達は沢山の大人に囲まれ『誰か』に声を掛けるように言われ、手を取る事も何も言う事も出来なかった。
何でみんな話しかけてるん?
またおっちゃんが起きた時に話せばええのに。
あほや。みんなあほや。
私は気づけばお父さんの手を引き、お母さんの待つ待ち合い室へと戻って来ていた。お母さんとお婆ちゃんはまた穏やかな顔をしていた。
「ちゃんとお別れ出来た?」
その言葉を聞いた瞬間に私の喉は今までにないくらいに締め付けられ、瞬きをした時には何粒もの大きな涙が溢れ出していた。
分かっていた。本当はずっと分かっていた。
でも前みたいに、また笑って話せるんじゃないかと思っていた。思いたかった。
「何も、言えんかった。恥ずかしいし、何言ってええんか分からんし、もう嫌や。」
私はその場で泣き崩れ、お母さんは優しく頭を撫で続けてくれた。
産まれて初めて『後悔』を知ったその日の夜に
おっちゃんは私の前から去って行った。
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