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翌々日、おっちゃんの御葬式が行われた。 私もお兄ちゃんも、お婆ちゃんもお父さんも泣いていた。ただお母さんだけは凛とした姿で喪主を務めていた。 読経が始まり順番に尚香を済ましていく。私は泣きじゃくったままお母さんに手を引かれ、おっちゃんの前へと向かった。二度目の最後の挨拶。今度は泣いてしまって何も言えそうになかった。 でもそれは私だけではなかった。 お母さんもまた口をつぐみ黙っていた。 その時、私は初めて母親の涙を見た。 どんな大怪我をしても、私達が嫌な事を言っても、絶対に泣かなかったお母さんの右目から涙が一粒だけ流れていた。私は咄嗟にお母さんの手を強く握り返し、声を振り絞った。 「おっちゃん、大丈夫やで。お母さんには私らがおるからな。」 今言わんと、きっと後悔する。私もお母さんも。 おっちゃんが教えてくれたから、今伝えるな。 「おっちゃん、有難う。大好きやで!」 今度は不貞腐れた顔でもなく こんな涙に塗れた顔でもなく とびきりの笑顔でおっちゃんの前に立てますように。
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