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温めたパンと、シャッキリ歯ごたえのサラダ、そして牡蠣のチャウダーをそれぞれ用意する。
テーブルには、新しいダリアのブーケが用意されていて二人とも可愛く揺れる花に目を奪われていた。
二人は「美味しい」と目を細めて牡蠣のチャウダーを平らげてくれた。
ランチが終われば、栗さんは見守るいおり君を手招いた。
私は、お礼でも言われるのかと思っていた。
でも栗さんの口からは「お墓参り用の菊の花ちょうだいな」だった。
あんなにほっこりしたムードが、一気に氷点下まで下がる。
当然、お嫁さんは目を三角にしていた。
「お義母さん、あんなに意地悪ばっかり言われてたんですよ? もういいじゃないですか」
その声は、栗さんの旦那さんへの怒りのようなものが含まれていて、私は誤解していたことを肌で感じた。
そんな簡単なもんじゃないよね。
と悲しそうな栗さんを見て、何も言えずにいた。
あのマスターも止めなかった。
なのに、いおり君は訳知り顔でウンウンと二人のテーブルの前で立ちはだかっていた。
「それならこうしましょう」
とテーブルのブーケから一本花を抜き取った。
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