4人が本棚に入れています
本棚に追加
崩れ落ちていたいおり君の方へ、ちょうどゴキブリがやってきて、彼はそれを素手で捕まえた。
「強心臓に剛毛生やしてるのに、虫はダメなの可愛いですよね、彩果さんって。彩果さんと結婚出来て幸せだなー」
「いいから、早く外にやって!」
独り身の時には無かったやり取りも楽しいとは思っている。
けれど、やっぱり彼と恋愛をする気が湧かないのは変わらない。
「じゃあ、さっきのジャンケンやり直しにしてくださいね」
「分かったから!」
キッチンの隅に避難して縮こまる。
いおり君がゴキブリを捕まえて外に逃がす音をじっと聞いていた。
ベランダを閉める音を聞いて、安心して食事の準備を始める。
美味しい料理を作るのは好きだ。
相手がいれば張り合いも出る。
張り合いは出るけれど、誰に作っても特別な感情は出ない。
この日の夕飯は、クラムチャウダー。
朝作ったスープには、野菜と魚介の旨味が溶けていた。
焼き立てのタイミングで買ってきたフランスパンと合うはずだ。
数切れ切って、バスケット型の籠に入れる。
クラムチャウダーも貝殻模様の施されたスープ皿に盛り付ける。
あとは、大根やら人参と柿を混ぜ合わせてサラダにした。
最初のコメントを投稿しよう!