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一口、二口と、まずはスープを飲んだ。
胃が温まって、体全体に熱が行き渡る。
安心感のあるぬくもりに、フゥと息が漏れる。
「あら、ごめんなさい。私のため息は花も枯らしちゃうものね」
わざとらしく言ってみせると、いおり君の表情も和んだ。
「車の中では、あんなこと言ってごめんなさい。仕事のスイッチが入ると花一番に考えちゃうんですよ」
いおり君の素直さに私も救われるところがある。
「分かってるよ、こっちこそゴメンね」
肩をすくめて謝った。
「無理はしないでくださいね」
謝ったのにどういうことだと、目をパチクリさせた。
さすがのいおり君も、タイミングの悪さに慌てふためいて訂正する。
「違う、違うんです。つまりですね、無理をしてまで食事の用意はしなくても良いですよっていうことです」
「無理なんてしてないよ。好きなことしてるだけだもの」
私は語尾を強くして否定する。
「栗さんが言ってました。それにマスターも。彩果さんは、自分で気付かないうちに無理をする人間だって」
栗さんとマスターの名前を出されて、思わずキュッと体を固くした。
大変な思いをした人は、私以外にも大勢いると思えば、疲れも吹き飛ぶというものだ。
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