喫茶 森の貝殻のランチ

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いおり君は、それを強がりだと否定してきた。 「彩果さん。僕は確かに恋とか愛とか無く、結婚しましたけど、情は深いんですよ。疲れているパートナーを心配するくらいには」 そう言われると、私は何も言えなくて黙ってしまう。 沈黙を気にいおり君は、いつもよりずっと真面目に語りかけてくる。 「栗さんとマスターが、彩果さんが真面目にこだわって仕事をするのは、そこに存在意義を見出してるからだって言ってました。僕には、そんな着眼点がなかったから、二、三日観察してたんですけど」 いおり君の急な爆弾発言にビビりつつ、私も真剣に耳を傾ける。 少し塞ぎたくなりながらも。 「それで、彩果さんのご両親がいる直島に行ってきたんです。彩果さんのお母さん、彩果さんのことすごく心配してました。彩果さんが好きなことを前向きに出来てるかってこと。彩果さんのご両親、直島に住むのが夢だったってことも聞きました」 そうだ。 私は直島に住むのが夢だった両親に連れて来られたようなものだった。 元々転勤族で、実家は有って無いようなもので家に対する思いなんて、そうそう無かった。 でも、急に知らない土地を実家だなんて言われて、戸惑った。 家族は近いほうがいいなんて言われて、知らない土地で就職させられたことも、嫌だった。 嫌だったけど、それを聞かないと本当に帰る場所が無くなる気がしたのだ。
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