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「ご両親いわく、好きにして良いそうですよ。むしろ、もっと好き勝手して欲しいんだとか。直島の家に行っても良いし、来ないのも良いって言ってました」
「なんだそれ」
思わず出た言葉は、すごく呆気ないものだった。
いおり君も「僕もそう思います」と笑っている。
母や祖母の顔色をうかがって生きていたのに当の本人達は、たったそれだけのことだったのかと、笑えてきた。
私の悩みは、大変に小さなもののようだったらしい。
チャウダーの中に沈められた牡蠣くらいに大きく見えていたのに、両親からしたら森の中で見つけた貝殻のイヤリング並みだったらしい。
あんなに縛られて息苦しかったというのに、サラッと「好きにしろ」だなんて反則も良い所だ。
でも、そんなもんかと思うと、楽にもなってきた。
途端に、目の前の料理が手のこんだご馳走に見えて、私は何をそんなに頑張っているんだと笑えた。
栗さんやマスターに話したら、きっとエビみたいに曲がった背中や熊みたいに大きなお腹を震わせて笑うことだろう。
「いおり君、今日は疲れたわ」
「僕もですよ」
「風呂掃除したくないなー」
「そうですね、僕もです」
「じゃあ、ジャンケンでもしますか」
「やっぱり、そうなりますか、負けませんよ」
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