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数週間後のあなたへ
人間は賢いもので、数週間も経つとある程度の免疫がついてくる。
あれほど悲しく辛い想いをしたのに、それにそっと蓋をして時々溢れそうになるのを押し込められるようになる。
たぶん彼への想いが変わった訳ではない。
ただ思い出す内容が変わったのだ。
キラキラした思い出には蓋をされ、その代わりに辛かった事や我慢していた事がぽつぽつと出始めた。
それは私の知らないところで蓄積された彼への想いの一部。
別れる理由が全部私の所為になってたけど、彼にも悪いところはあったよね。
そもそも家に行くの私ばっかりだったな。
去年のバレンタイン、有難うよりも先にプリンが良かったとか言ってたな。
親友にも彼は辞めとけって言われてたな。
あ、お気に入りのマグカップ置いて来ちゃった。
こうすると、彼を嫌いになれた気がした。
ただ、頭の隅では彼をまだ好きな自分から逃げているだけだと理解はしていた。
でもまだこれで良い。これが始まり。たぶん。
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