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1 幽霊騒動
広瀬川に架かる霊屋橋。
仙台の中心部にほど近い市街地の一角にあり、昼間はいろいろな人が行き交うが、夜は川のせせらぎが聞こえる、落ち着いた佇まいの橋だ。
ここに、幽霊が出る、という噂が広がっていた。
その幽霊とは――男、痩せた中年、スーツ姿。何もしゃべらないし、何をするわけでもない。ただ、歩いている人を見ているだけ。しかもその相手は、若い女性。
そこを通る女性たちは不安がった。若くない人も含めて。
そして、ある蒸し暑い夜のこと。
繁華街のアパレルショップで店員をやっている明日香が、帰り道の霊屋橋に差しかかった。
幽霊の噂は、明日香の耳にも届いていた。
でも、噂に過ぎないし、襲われたという話でもない。
ま、出てきたら、その時はその時だ――そう思って、遅くにそこを通ることをあまり気にはかけなかった。
今日は星もなくて、いつも以上に暗い。早く帰ってお気に入りのお笑い芸人のビデオでも見よう――そんなことを考えながら、霊屋橋を渡り終えると……後ろに気配を感じた。
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