真実

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真実

「僕だ・・・覚えている」 水晶型のモニターには宗親の幼少期が映っている。 「そう、お主じゃ。お主のいう通りお主は母一人子一人で育った」 「そうだよ」 「母が10歳の時に出ていった」 「そう話したじゃないか」 「そして祖父母が引き取りお主を育てた」 「だからそう言ってるじゃないか、どうしたのさ」 「真実はそこまでじゃ」 「なんだって・・・」 「お主は大学にはいけなんだ、祖父母には金が無かった」 「何言ってんだよ!」 「では何大学に行ったのじゃ」 「だから東洋技革新大学・・・」 「学友は?」 「一人だったんだよ」 「では教授の名は?講師の名は?一人くらい言えるじゃろ・・・」 「えーっと・・・」 「お主はいいヤツじゃ、それは真実じゃ。大学にはいけなんだが祖父母を恨んだりせず、高校卒業すると自動車工場で働いた。そして祖父母の面倒を見ながら真面目に働いておった」 「そうだ覚えている。パーツの作成をひたすらしていた事を・・・」 「徐々に記憶が蘇ってきたかの。そしてお主のいう通りに23歳の時に祖父母が続けて亡くなった。心の拠り所を失ったお主は自動車工場を辞めた後、生活の為に警備会社に勤めた」 「非常勤だけどね」 「だいぶ記憶が戻ってきた様じゃの。そして12年、何もなく東洋技術革新大学の警備員を務める」 「そっか、僕は警備員だっただけだ・・・」 「しかし、警備室から見える事務員の子に惚れておった様じゃの」 「なるほど、僕が好きだったんだ。しかも、いやらしい事まで妄想していたらしい」 「ほっほっほ、健全な男子の証じゃ、そして35歳の誕生日」 「あー、車を買ったんだ。フェラーリ・・・だけど非常勤の警備員に買える物じゃない・・・」 「わしは車の事は分からんからのう」 「えーと・・・そうだ・・・フェ・・・フェ・・・フェアレディZだ、赤のフェアレディゼットZを買ったんだよ」 「ほう、それはお主の稼ぎでも買えるのじゃな」 「新車はムリだよ、中古を買ったんだ・・・80万円」 「よく分らんがそれは安いのか」 「いや安すぎだよ、新車なら400万、中古ならその半分くらいかな」 「なるほど80万は安すぎじゃな」 「だけどさ、運転するの初めてなのに首都高に入って・・・」 「いよいよじゃな」 「そうだ滅茶苦茶アクセル踏んで・・・200キロを超えて・・・」 「怖くはないのか?」 「それより他の事考えじゃった・・・このまま時空を超えて転生しないかなって・・・そうか・・・」
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