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私には暁人がいるのに、どうして胸が苦しくなるんだろう?
同情なのか友情なのか、それとも愛情なのか……それは、言葉で表すにはとても難しい感情だった。
それに、苦しいのは璃月の方なのに。
両親を失って、お姉さんの心も失って。追い打ちをかけるような失恋に心が折れてしまわないかって……
「そっか……心配なんだ……」
速めていた足を止め、私は通路の壁に寄り掛かってつぶやいた。
本当に助けが必要だったのは――
「璃月……」
キミだった。
来た道を引き返す。
私の本当の気持ちを伝えなきゃ。
明るかった通路から薄暗い空間に戻り、目を凝らして璃月を捜す。
「璃月!」
「……夕?」
璃月はまだその場にいた。正面に回り込むと彼は視線を逸らした。
「なんで戻ってきたんだよ……」
「心配だから」
頬を涙で濡らしている姿に胸が痛み、私から初めて璃月を抱きしめた。
「夕……」
すぐに抱きしめ返され、彼の背中に手を回す。
「戻ってきてくれてありがとう……」
耳元の囁きにうなずきを返す。しばらくそうしたあと、私たちは歩き出した。
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