20人が本棚に入れています
本棚に追加
璃月に連れてこられた場所は、ショーが行われるスタジアムの下にある休憩室だった。水族館らしく、水槽の底が見られるようになっていて時々イルカが通り過ぎていくのが見える。
「こんな所があるなんて知らなかった」
「だろ? 結構穴場なんだよ」
「来たことあるんだ?」
「うん。真司さんが教えてくれた」
懐かしそうに目を細める璃月に、私は言葉を見失った。
「好きな子が出来たらここに連れて来いよって、あのときはどういう意味で言ってたのかわかんなかったけど」
「……?」
璃月はちらっと私を見たあと背伸びをした。
「告白するならここですれば良かった」
「……成功しやすいってこと?」
自動販売機に向かう背中に問い掛ける。
「まあ。いい雰囲気だし」
水槽に目を向ける彼につられると、イルカがこちらを見ていて目が合ったような気がした。イルカはまるで笑っているように頭を振って上昇し、跡にはキラキラと輝く泡が残った。
「お茶でいい?」
「うん。ありがとう」
差し出されたペットボトルを受け取り、スツールに並んで腰掛ける。
「あと、イルカには不思議な力があるっていうから」
なんだか可愛らしい理由に微笑ましくなる。
最初のコメントを投稿しよう!