Scene19

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 璃月の手が小刻みに震えている。私はその手に自分の左手を重ねた。 「だから、あのとき……中にまだ姉さんがいるって助けを求めた。それが浅山さんだったんだ」  (こうべ)を垂れる彼に、涙があふれて仕方ない。 「オレが助けを求めなかったら……夕から父親を奪うこともなかった」  苦しげに咳き込む璃月をそっと抱きしめる。懺悔(ざんげ)をするためにここへ来たと知り、私の胸は鈍い痛みで押しつぶされそうになった。 「ごめん……ごめん……」  謝罪を繰り返す彼の背中を何度も撫でる。ずっと、こんなにも重い責任を感じていたのかと思うと息が苦しくなる。  他に誰も人がいなくて良かった。私たちを見つめているのはイルカたちだけ。 「話してくれてありがとう。私は大丈夫だから……もう苦しまなくていいんだよ」  最初は大人びていると思っていたけど……腕の中の璃月は幼い子どものように無防備で。   「璃月のしたことは間違ってないよ」  護ってあげたいと強く思う。 「私は、キミと出逢ったことを否定したくない」 「夕……」    顔を上げた璃月の顔は涙に濡れていて、私はハンカチを取り出して彼の頬を拭った。 「……本当に?」  落ち着きを取り戻したころ、璃月がぼそりと呟いた。 「本当だよ」  自分の涙を拭きながら答える。 「ありがとう……」  彼はそう言いながら私の髪を愛おしそうに撫でた。
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