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璃月の手が小刻みに震えている。私はその手に自分の左手を重ねた。
「だから、あのとき……中にまだ姉さんがいるって助けを求めた。それが浅山さんだったんだ」
頭を垂れる彼に、涙があふれて仕方ない。
「オレが助けを求めなかったら……夕から父親を奪うこともなかった」
苦しげに咳き込む璃月をそっと抱きしめる。懺悔をするためにここへ来たと知り、私の胸は鈍い痛みで押しつぶされそうになった。
「ごめん……ごめん……」
謝罪を繰り返す彼の背中を何度も撫でる。ずっと、こんなにも重い責任を感じていたのかと思うと息が苦しくなる。
他に誰も人がいなくて良かった。私たちを見つめているのはイルカたちだけ。
「話してくれてありがとう。私は大丈夫だから……もう苦しまなくていいんだよ」
最初は大人びていると思っていたけど……腕の中の璃月は幼い子どものように無防備で。
「璃月のしたことは間違ってないよ」
護ってあげたいと強く思う。
「私は、キミと出逢ったことを否定したくない」
「夕……」
顔を上げた璃月の顔は涙に濡れていて、私はハンカチを取り出して彼の頬を拭った。
「……本当に?」
落ち着きを取り戻したころ、璃月がぼそりと呟いた。
「本当だよ」
自分の涙を拭きながら答える。
「ありがとう……」
彼はそう言いながら私の髪を愛おしそうに撫でた。
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