Scene19

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 海は凪いでいた。  降り注ぐ夕陽に目を細め、黄金に染まる海面を眺める。地上に星を散りばめたようにキラキラと輝く波頭。  美しい光景は心を感傷的にさせて困る。   「おまたせ」  遅れて水族館から出てきた璃月が私の横に並ぶ。 「キレイだな」  視線を感じて振り向くと、璃月は海ではなく私を見ていた。金色に染まる璃月は例えようもなく美しく、儚く見える。 「夕を好きになって良かった」  璃月の蹴り上げた砂がサラサラと舞い、優しい風の行方を見せてくれる。 「キスしてもいい?」  私の両手を取った彼が、真剣な表情で問い掛けてきた。どうやら冗談ではなさそうだ。   「ここ以外なら」  唇を指差すと璃月は苦笑を浮かべてうなずいた。 「目、閉じて」  前髪を掻き上げ、額に口づける。唇が下りてきて、鼻に、頬に、耳に……本当に唇にはしてこなかったけど、首筋にまでしてきたときはさすがに身を引いた。 「ばか」  体が熱い。彼の唇の感触を消すように首をさする。 「忘れないで」  璃月は私の左手を掴んでその動きを止めさせた。
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