Scene19

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「オレのこと、忘れないで」  潤んだ瞳に吸い込まれるように私は背伸びをした。 「忘れるわけないよ」  驚きに目を丸くして見つめ返してくる璃月。 「夕に出逢えて本当に良かった」  手を引かれて彼の腕の中に収まる。聴こえてくる波音があまりに穏やかで……抵抗する気は起きなかった。   「好きだよ。どうしようもないくらい」  最後にぎゅっと力を込めたあと、璃月は私を手放した。 「うん……」 「もう泣くなよ」 「…………」 「手、出して」  言われるままに右手を出すと、璃月の手のひらが重なった。 「あげる」  乗せられたのは、暁人が買ってくれた物と同じクラゲのストラップだった。 「……何か願ったの?」  ストラップを握りしめて璃月を見つめる。 「夕が願いなよ」  彼は首を左右に振った。 「璃月の願いが叶いますように」 「何言ってんだよ……」  本末転倒な願いだと思われたのかもしれない。璃月は困ったように前髪を掻き上げた。
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