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「オレのこと、忘れないで」
潤んだ瞳に吸い込まれるように私は背伸びをした。
「忘れるわけないよ」
驚きに目を丸くして見つめ返してくる璃月。
「夕に出逢えて本当に良かった」
手を引かれて彼の腕の中に収まる。聴こえてくる波音があまりに穏やかで……抵抗する気は起きなかった。
「好きだよ。どうしようもないくらい」
最後にぎゅっと力を込めたあと、璃月は私を手放した。
「うん……」
「もう泣くなよ」
「…………」
「手、出して」
言われるままに右手を出すと、璃月の手のひらが重なった。
「あげる」
乗せられたのは、暁人が買ってくれた物と同じクラゲのストラップだった。
「……何か願ったの?」
ストラップを握りしめて璃月を見つめる。
「夕が願いなよ」
彼は首を左右に振った。
「璃月の願いが叶いますように」
「何言ってんだよ……」
本末転倒な願いだと思われたのかもしれない。璃月は困ったように前髪を掻き上げた。
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