Scene20

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 春の午後はポカポカと温かく、穏やかな風が遥の髪を優しく撫でている。 「昨日は楽しかった?」  川沿いの桜並木を歩いていたら尋ねられた。  璃月と出掛けたことを、きっと良くは思っていないだろう。 「遊びに行ったわけじゃないよ」  散り始めたソメイヨシノの花びらを浴びながら慎重に言葉を選ぶ。 「あたしだったら浮かれちゃうけどね」 「…………」 「夕ちゃんはいいな」    羨望の眼差しで見つめられ、私は目を逸らした。 「ねえ、本当に何もなかった?」  不安げな声がして視線を戻す。 「ないよ。私には暁人がいるんだから」  まっすぐに見つめると遥は目を見開いた。 「じゃあ、なんで泣くの?」    細い腕が伸びてきて私の頬に触れた。 「璃月さんのこと、なんとも思ってなかったら泣かないよね?」  大人びた微笑をたたえる遥に向かい、うなずきを返す。 「昨日、璃月さんに会ったんだ」 「……えっ?」 「どうしてもふたりのことが気になって……実は待ち伏せしてたの。でもね、本当に会えるなんて思ってなかったんだよ?」  遥は可愛らしく舌を出した。会ったというなら、たぶん私と別れた後だろう。
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