Scene20

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「夕ちゃんにまた振られたって、笑ってた」 「…………」 「あたし、璃月さんが笑ってるのを初めて見たの。強がりとかじゃなくてね、本当に自然に笑ってた。それ見て思ったんだ」  遥は鞄から小さなケースを取り出して私の前でそれを開けた。 「璃月さんは夕ちゃんを好きになって幸せだったんだって」  中には淡いピンクの桜貝があった。 「海で拾ったんだって。夕ちゃんみたいにキレイだからって」  少しでも力を加えると欠けてしまいそうなくらい薄い貝殻。 「自分を好きになってくれたお礼にって、あたしにくれたんだ」  もしかしたら、私が海を眺めていたときに見つけたのかもしれない。 「せっかく見つけたのに、もらっていいのかなって思ってたけど。今の夕ちゃんを見ればわかるよ。きっと報われることがあったんだって」 「……ううん。傷つけてばかりだよ」 「そんなことないよ」  遥は私をそっと抱きしめてくれた。   「あたしの好きな人を幸せにしてくれて、ありがと」 「遥……」    息が苦しくなって……私は華奢な体にすがりついた。ゆっくりと背を撫でてくれる小さな手のひら。 「璃月さんの好きな人が夕ちゃんで良かった」  そう思えるのは遥の心が綺麗だからだ。私なんかより、ずっと……
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