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涙が目尻を伝う感触がして目が覚めた。カーテンの隙間から射しこむ光すら眩しくて瞬きを繰り返す。
まだ夢を見ていたいのに、嫌でも現実を知らせてくることがうっとうしくて顔をしかめる。
目覚めるたびに絶望感を味わうのはもう終わりにしたい。だけど、当たり前に朝は来る。
お父さんが他界して、今日で1年が経つ。
その日から痛みが変わらないということは、この喪失感がなくなることはきっと一生ないんだろう。
これは何かの罰なの?
消防司令補として人々のために働いてきた父が殉職してしまうなんて。
私が何か悪いことをしたの?
だったら謝るから……お父さんを返してほしい……
「夕」
ベッドの上でうずくまっていると、窓の外からくぐもった声が聞こえた。
「おはよ」
コンコンとガラスを叩く音がする。身を乗り出せば届く距離だからって……もしものことがあったらと思うと背筋が凍る。私は慌ててベッドから抜け出し窓を開けた。
「それ、やめてって言ってるでしょ」
「大丈夫だって。落ちたことなんか一度もないだろ?」
「そういうことじゃなくて」
「わかったよ」
隣に住んでいる幼なじみの遠野暁人は、言い合いになる前に引き下がってくれた。なんだかんだ言っても結局は私の気持ちを尊重してくれる。
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