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「嘘が下手」
ゆっくりと璃月の唇が近づいてくる。拒否しなきゃいけないのに、体が動いてくれない。
私は、璃月に慰めてもらおうとしてる。
でも、そんなの最低だ――
「いや、だよ」
ようやくかすれた声が出て、璃月は動きを止めた。
「もう無理だよ」
「夕……」
両手で顔を覆うと、きつく抱きしめられた。背中を撫でてくれる手のひらが心地よい。
私はいつまで悲劇のヒロイン面をしているんだろう……
「ごめんね」
「夕は何も悪くないだろ……」
煮えきらない私を責めることもなく、璃月はひたすらに背中をさすってくれた。
「悪いのは全部、オレだから」
泣き出しそうな声がする。胸にうずめていた顔を上げると璃月は瞳を潤ませていた。
「オレが……」
「夕ちゃん!」
何かを言いかけた璃月の言葉を、遥によく似た声が唐突に遮った。体を離した彼につられて、私は恐る恐る振り返った。
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