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「何、してるの?」
息を切らして目の前まで走ってきたのはやっぱり遥で、その顔には驚愕と嫌悪が入り混じっていた。
「こ、これは……」
「オレが無理やりやったことだよ」
思わず目を逸らすと、璃月は私を隠すように前へ出た。
「でも、キスしてませんでした……?」
「しようとしたけど、拒否されたよ」
璃月の背中に隠れているから遥の表情は見えないけど。きっと信じてもらえないだろうな……
「なんでっ……あたしを振ったあとにそんなことするなんて」
「ごめん」
「見損ないました。璃月さんも、夕ちゃんも」
「はる……」
遥の前に出ようとしたら璃月にそれを制された。
「オレのことは見損なっていい。でも夕は巻き込まれただけだから、勘違いしないで」
「夕ちゃんのこと好きだから庇ってるんじゃないんですか?」
「違うよ。夕はオレにちゃんと失恋させてくれた。抱きしめた以外、本当に何もないよ」
「…………」
そうだけど、そうじゃない。甘えてしまいたいと思ったのも事実だから。
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