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「オレは遥さんに勇気をもらったんだよ」
「……あたしに?」
遥が落ち着いてくるのが声でわかった。確かに私が話しても言い訳にしか聞こえなくて事態を悪化させてしまっただろう。
「遥さんのおかげで自分の気持ちを伝えることができたんだ。本当にありがとう」
こんなに饒舌な璃月は初めて見た。私と遥の仲を慮ってがんばってくれているのかもしれない。
「そんな……か、勘違いしてごめんなさい」
遥が謝ることじゃないのに。
やましいことはしてなくても、申し訳ない気持ちでいたたまれなくなる。
「夕ちゃんも、ごめん」
璃月の後ろをのぞき込まれて遥を見返す。
「ううん。誤解されてもおかしくなかったよね」
「うん。でも誤解で良かった」
抱きついてくる遥を受け止め、璃月を見上げる。もう泣きそうな顔はしてなかったけど、切ない眼差しで私を見ていた。
「いよいよアキ兄に愛想をつかしたのかって不安になっちゃった」
「……そんなわけないよ」
一拍遅れて遥に視線を戻す。この無邪気な瞳を傷つけたくないと思う。
たぶん間違えていないはずなのに。
胸の中のモヤモヤがいつまでも消えてくれなかった。
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