Scene16

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「本当にキスはしてないの?」 「してないってば……」  何度も同じ返事をしても、暁人は納得いかないような顔で私を見返した。 「アイツ、油断ならないな……」    帰宅したあと、うちのリビングで正直に璃月から告白されたことを話したせいだ。自分から話しておかないと、後から知られたときに不信感を抱かせてしまうだろうから。 「ちょっと、上書きさせて」  そして、母がまだ帰ってないのをいいことに私を抱きしめてくる。 「私……もう一緒に行かないことにする」  思わず、暁人の腕の中で呟いた。 「……そっか。そうだよな。俺も思うところはあって」  暁人が言葉を切ったので顔を上げる。彼は疲れたような笑みを浮かべていた。 「何?」 「実は……俺もキスされそうになった」 「えっ」 「してねえよ! きっちり断ったからな?」  暁人は慌てて付け加えた。瑠璃さんとキスする場面を想像してしまい、それが顔に出てしまったのかもしれない。  同じことを、自分も経験したくせに。でも、とっさに取り繕うことはできなかった。
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