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「本当にキスはしてないの?」
「してないってば……」
何度も同じ返事をしても、暁人は納得いかないような顔で私を見返した。
「アイツ、油断ならないな……」
帰宅したあと、うちのリビングで正直に璃月から告白されたことを話したせいだ。自分から話しておかないと、後から知られたときに不信感を抱かせてしまうだろうから。
「ちょっと、上書きさせて」
そして、母がまだ帰ってないのをいいことに私を抱きしめてくる。
「私……もう一緒に行かないことにする」
思わず、暁人の腕の中で呟いた。
「……そっか。そうだよな。俺も思うところはあって」
暁人が言葉を切ったので顔を上げる。彼は疲れたような笑みを浮かべていた。
「何?」
「実は……俺もキスされそうになった」
「えっ」
「してねえよ! きっちり断ったからな?」
暁人は慌てて付け加えた。瑠璃さんとキスする場面を想像してしまい、それが顔に出てしまったのかもしれない。
同じことを、自分も経験したくせに。でも、とっさに取り繕うことはできなかった。
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