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「……断って、どうなったの?」
嫉妬心と自己嫌悪を覆い隠すように問い掛ける。
「驚いたような顔してたな。たぶん、反応を見てたんじゃないかな」
「それって……試されたってこと?」
暁人は私から離れてソファに座り込んだ。
「俺が本物の真司さんかどうか、確かめたかったんだと思う」
珍しく見上げられてドキッとする。
「俺を真司さんだと思い込んでたとしてもさ、やっぱり違和感はあったんじゃないかな」
「……本当にそうなのかな」
泣きそうになってうつむくと、暁人に腕を引かれた。私を受け止めた彼は優しく髪を撫でてくれた。
そういう疑念みたいなものが出てくるということは心の変化が現れたということじゃないのか。でも、ただの憶測に過ぎないのだから……ぬか喜びをしてはいけない。
「そうじゃなかったとしても、もう俺にできることはないよ。これ以上夕に嫌な思いをさせたくないし」
「私のためならやめないで」
暁人の腕にしがみつく。これは本心だった。
「俺が璃月に嫉妬するくらいなら、夕はもっと苦しかったんじゃないの? 夕の心を救うどころか傷つけて……自分が情けねえよ」
「…………」
「俺は夕の優しさに甘えて自己満足してただけなんだよ」
「暁人……」
寂しさに気づいてもらえた嬉しさと、瑠璃さんに対する罪悪感が同時に湧き上がる。
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