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「ごめん。俺は勇さんみたいになれなかった」
近づいてくる唇から、吐息が漏れた。
「暁人は暁人のままでいいよ」
「……そうかな」
「そうだよ。暁人は私を置いていかないでね……」
あたたかい口づけに、夢見心地でつぶやく。
「夕……不安にさせてごめんな」
暁人の瞳の中にいる私が小さく頭を振る。
「俺はずっと夕のそばにいるよ」
「本当に?」
「約束できるよ」
弧を描いていた唇がまっすぐになり、真剣な眼差しで私を見つめてくる。
「私も。暁人のそばにいるって約束する」
「……ありがとう」
「信じてないでしょ?」
驚いたような顔をするから思わず問い掛けた。暁人は、答える代わりに私の額へキスをした。
「いや、俺って重い男だなって思っただけ」
「……そう?」
「夕が重く感じてないならいいけどさ。引かれないように気をつけるよ」
「私って結構鈍感みたいだから、大丈夫じゃない?」
暁人の言葉を引用すると、彼は私の目をじっと見つめた。
「愛してる」
「それはさすがに重いんじゃない?」
冗談に乗ったつもりが、急に真面目な顔つきになる暁人。
「……してるよ」
耳元の囁きは、とろけてしまいそうなくらい甘かった。
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