Scene16

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「ごめん。俺は勇さんみたいになれなかった」  近づいてくる唇から、吐息が漏れた。 「暁人は暁人のままでいいよ」 「……そうかな」 「そうだよ。暁人は私を置いていかないでね……」  あたたかい口づけに、夢見心地でつぶやく。 「夕……不安にさせてごめんな」  暁人の瞳の中にいる私が小さく頭を振る。   「俺はずっと夕のそばにいるよ」 「本当に?」 「約束できるよ」    弧を描いていた唇がまっすぐになり、真剣な眼差しで私を見つめてくる。   「私も。暁人のそばにいるって約束する」 「……ありがとう」 「信じてないでしょ?」  驚いたような顔をするから思わず問い掛けた。暁人は、答える代わりに私の額へキスをした。   「いや、俺って重い男だなって思っただけ」 「……そう?」 「夕が重く感じてないならいいけどさ。引かれないように気をつけるよ」 「私って結構鈍感みたいだから、大丈夫じゃない?」  暁人の言葉を引用すると、彼は私の目をじっと見つめた。 「愛してる」 「それはさすがに重いんじゃない?」  冗談に乗ったつもりが、急に真面目な顔つきになる暁人。   「……してるよ」  耳元の囁きは、とろけてしまいそうなくらい甘かった。
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