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みんなが笑顔でいられたらいいと、そんな都合のいいことを思っていた。でも、それは思うよりずっと難しいことだった。
「昨日の夜、璃月に連絡したんだよ。瑠璃さんの様子と俺の気持ちを伝えたくてさ」
翌日、部活から帰ってきた暁人が久しぶりに散歩をしようと私を外へ連れ出して。おもむろに口火を切った。
「もう協力できないってこと、璃月は納得してくれたよ」
「そう……でも、本当にいいの?」
「え?」
こんな中途半端な終わり方でいいのか。昨日暁人と別れてから、ずっと考えていた。
「私のことは抜きにして考えて」
「…………」
言葉に詰まっている。心残りがないと言えば嘘になるからだろう。それでも、暁人が決めたことなら私が口出ししたところで決心は鈍らないだろう。
「俺は思い上がってたんだよ」
暁人は足を止めた。
「それを思い知らされて、結構へこんでる」
半歩行き過ぎた足を戻し、私は彼の隣に並んだ。
「でも、だからこそ俺の隣にいてくれる夕を大切にしなきゃって、改めて思ったんだよ」
「……もう充分大切にしてもらってるよ?」
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