20人が本棚に入れています
本棚に追加
「幼なじみとしては、な? これからはちゃんと彼氏らしいことをしたいんだよ。俺たち付き合ってからろくにデートもしてないだろ?」
それに不満があったことは否めない。でも、黙っておくことにしようと思う。
「気にしてくれてたんだ?」
「ちゃんと考えてたよ」
どちらからともなく手を繋いで歩き出す。
「だから、いいんだよ」
「……そっか」
当てもなく歩いていたら、川沿いの桜並木まで来てしまった。花びらがハラハラと舞い、ふいに璃月のことを思い出してしまった。
『悪いのは全部、オレだから』
あのとき、何を言おうとしたんだろう?
「璃月がさ」
「えっ?」
「明日、夕と話がしたいって言ってんだけど。どうする?」
一瞬心を読まれたかと思ってビクッとしてしまったけど、暁人は構わずに続けた。
「え、ふたりで?」
「ああ。夕には黙っておこうかとも思ったけどな」
嘘が苦手な暁人は、きっとそんなことできないだろう。
「でも、これが最後だって言われたらさ……そんなことできないだろ」
やっぱり暁人はお人好しだ。そして、私にもそれが移ってしまったのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!