Scene17

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「水族館に行こう」  駅前の広場で会うなり、璃月は開口一番にそう言った。唐突すぎて開いた口が塞がらない。 「そんなに驚く?」  いつもより少し明るい笑顔を見せる彼を眺める。まるで何かを吹っ切っろうとしているかのような表情。 「……どこかに行くなんて思ってなかったから」  ようやく絞り出した返答は、なんの捻りもなくつまらないものだった。 「それを言ったら来てくれなかっただろ?」  案外、璃月は私のことをよくわかっているのかもしれない。 「その辺のお店じゃだめなの?」 「最後のワガママだから」  やわらかな春の風が璃月の前髪を優しく揺らす。 「ズルイ言い方……」  胸がチクチクと痛み出し、私は急いで璃月から目を逸らした。 「行こう」 「えっ、ちょっと……」 「今日だけでいいから、暁人さんのことは忘れて」  手を取られたことに困惑していたら、それを戒めるように強く握りしめられた。その手は冷たくて、体温が奪われていくような感覚がした。   「話があったんじゃないの?」 「それはあとでいい」  璃月に手を引かれ、私の足はやけにもつれた。
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