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電車に乗ると、空いていた席に誘導されて私たちは並んで腰を掛けた。
車内は暖かくて、ぼんやりと向かい側の車窓を眺める。家を出るときは薄雲が張っていたのに、今は晴れ間をのぞかせる空がゆっくりと動いている。
ふいに肩に重みを感じた。横を見ると目を閉じた璃月がもたれ掛っていた。
狸寝入り?
判別がつかない。なんだか私も眠たくなってきて、この際どっちでもよくなった。まどろみに身を任せて瞼を下ろす。
『――だよ』
遠くから声が聞こえた気がした。ハッとして目を開く。
「ごめん、起こした?」
間近に璃月の顔があった。動くと唇が触れてしまいそうで、息を詰めて彼の目を見つめる。
「次で降りるよ」
それを察したのか、璃月はさっと顎を引いた。
「キミはいつから起きてたの?」
何分くらい寝てしまったんだろう……答えを待つと彼はふっと微笑を浮かべた。
「最初から」
「寝たふりをしてたの?」
「何もしてないから大丈夫だよ」
そんなこと訊いてないのに……逆に疑わしい。
でも、人目があるし変なことはできないだろう。私は密着している体を離すように居ずまいを正した。
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