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「……私のどこがいいの?」
暁人が私を好きでいてくれる理由は理解できるけど、璃月の気持ちはよくわからない。一緒にいる時間が少なすぎて……。
「全部」
「適当に言ってない?」
なんだか可笑しくなって、私も笑ってしまった。
「やっと笑った」
璃月は安堵したように目を細めた。そのまま熱い眼差しで見つめてくる。あんなに読みづらかった瞳なのに、今はただ真っ直ぐに気持ちを伝えてくる。
「暁人さんより先に出逢ってたら、オレを選んでくれた?」
潤んでいく瞳を見ていたらうっかり肯定してしまいたくなる。それくらいの情熱を感じて、ようやく璃月の気持ちを理解できた。
「それでも暁人を選んでたよ」
だから、はっきりと答えた。
私とキミの気持ちは、イコールじゃないから。
「……そっか」
予想していた答えだったのか璃月は静かにうなずいた。いっそ反論してくれた方が気も楽だったのに。
「暁人さんが羨ましいよ」
乾いた笑みを浮かべた彼が私から離れ、室内の隅に身を寄せる。
「……先に進んでるね」
込み上げてくる涙を堪え、私はその場を後にした。
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