Scene17

5/5
前へ
/148ページ
次へ
「……私のどこがいいの?」  暁人が私を好きでいてくれる理由は理解できるけど、璃月の気持ちはよくわからない。一緒にいる時間が少なすぎて……。   「全部」 「適当に言ってない?」  なんだか可笑しくなって、私も笑ってしまった。 「やっと笑った」  璃月は安堵したように目を細めた。そのまま熱い眼差しで見つめてくる。あんなに読みづらかった瞳なのに、今はただ真っ直ぐに気持ちを伝えてくる。 「暁人さんより先に出逢ってたら、オレを選んでくれた?」  潤んでいく瞳を見ていたらうっかり肯定してしまいたくなる。それくらいの情熱を感じて、ようやく璃月の気持ちを理解できた。 「それでも暁人を選んでたよ」  だから、はっきりと答えた。  私とキミの気持ちは、イコールじゃないから。   「……そっか」  予想していた答えだったのか璃月は静かにうなずいた。いっそ反論してくれた方が気も楽だったのに。 「暁人さんが羨ましいよ」  乾いた笑みを浮かべた彼が私から離れ、室内の隅に身を寄せる。 「……先に進んでるね」  込み上げてくる涙を堪え、私はその場を後にした。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加