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ここまでの展開で大体、想像付いてたけど矢継ぎ早過ぎて頭がついていかない。
そのままの勢いで頷きそうになった頭を戻す。
キスから出た第一声が拒絶の言葉だった。
「ごめん、どちらかというと」
「あなたの言うことは聞きます。今回は無理を言ってしまったけれどあなたが来るなと言うのなら行きません」
「いや、それでも」
「ダメ、ですか?」
色っぽい眼から甘えるような眼に変わる。
そんな何もかもを許してしまいそうになる眼で見ないでくれ。心が揺らいでしまう。これ以上距離が縮んでしまえば僕は君を好きにならないといけない。
好きになってしまえばきっとまた。
「あの子のようにならないか、心配なんですね?」
あの子とは僕の元カノ。もう別れた。僕が原因で。
「わたしはたとえあの子ようになってもあなたを嫌いになりません、絶対に。だってもうあなたの傍若無人には慣れましたから」
『ね?』と続く。
同意を強制してくる視線。頷くしかないような目線。逃がしてもくれなさそうな真剣な眼差し。
そういえば最近こういう顔を使うようになってきたっけ。返事を放置してるとその眼から一線の涙が滴るのが見えた。
「わたしが何かを考えるときに側には必ずあなたが居る。たとえあなたが居なくなってもわたしはずっとあなたのことを考えていて、あなたもずっとそこにいるんです」
僕はそれに負けてしまう。この子は僕の側に居てくれた女性だ。
なにかを考えるときもなにも考えていないときでも側に居てくれた。
「はぁ…うん、降参だよ」
文字通り降参だと両手を挙げた。
先に僕が話そうとしたことを全部言われてしまった。こうなればこちらから言える言葉はなくなった。
彼女の方が僕よりも一枚上手だった。
すると距離を縮めて抱き付いてくる。
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