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また腕にぎゅぅと力込めてきた。
「じゃあさ」
「なんですか?」
「敬語は無しってことで」
「で、でも…」
「もういいでしょ、こんな関係になったんだから」
「ふはぁぁぁー…よかった。今までずっと敬語だったから。最近ちょっと口許が緩みすぎてたし」
「別に気にしなくていいのに」
「うん。ありがとね。ダーリン」
「それだけはやめて」
「いいじゃないで…。ぁ…いいじゃない。もうこんな関係になっちゃったんだから」
「本当、強引だなぁ」
「だってそうじゃないと逃げちゃうから」
「逃げないよ」
「そうやって誤魔化していっつも逃げる」
「逃げないって」
「逃げる!」
「はぁ…バレてたか」
「うん、もうバレバレ」
いつの間にか心底見透かされてる。たった1年程度隣に居ただけなのに。
僕のどこが好きなんだろうか。ただあの時、助けただけなのに。
抱きしめたままの彼女が僕の耳元で呼吸する度に耳掃除の感覚が鳴る。
こそばゆい。
「えっと、長くない?」
「じゃあもう1回いい?そしたら離すから」
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