1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
きっとこの上には神様が居る。私は信じている。このステンドグラスの上には神様が居るって。
「あぁ、神よ。わたしに救いの手を」
ぐぅーんと。両手を天に伸ばす。背伸びをする時のように。目一杯空気を吸い込む。
「すぅぅぅぅーー」
眼を瞑り、またしばらくして息を吐く。
「ふはぁぁぁーー」
眼を開く。深呼吸。これが私なりの深呼吸。神様を崇めその空気を沢山吸い込む。そうして新しい日が始まる。良いことあるといいなって思える。
ステンドグラスのお花さんは今日も凜々としてて綺麗ね。
下を向くと小さな小人さんがこっちをじぃーと見ていた。
「あら、どうしたのかしら。迷い込んじゃった?」
体勢を下げてそう訊くとささーっと逃げて行った。
きっと忙しいのね。小人さんも気持ち良い今日の1日をどう過ごすか楽しみなんだわ。神様に忠誠を誓った私になら分かる。小人さんも他の小人さんもみんな今日という新しい1日をどう過ごすか楽しみにしてる。
あぁ、なんて気持ちいい朝なんだろう。まるで蕾から新しい花が開いたみたい。もう一度息を吸って息を吐く。新鮮な空気。おいしい。
さぁ、私の新しい一日はどう過ごそうかしら。楽しみ。
両手を目の前で組み今一度、目を瞑る。
「神よ。今日という新しい日が良い日になることをここに」
教会の入り口を見るとこちらに来る人影。
その手には私の好きな黄色い花。
「お客様だわ。お迎えしなきゃ」
シスターは修道服を翻し教会を出た。
ごみちりが舞う風。シャッターの閉まった商店街。ガラスが割れて戸は焦げて灰と化した住家。植物の垂れ下がる街の門。枯れた噴水。1輪の萎びた黄色い花。
そこにひっそりと立てられた墓は彼女のもの。
「はじめまして。ようこそ、わたくし達の庭へ」
最初のコメントを投稿しよう!