神様が与えてくれたもの

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きっとこの上には神様が居る。私は信じている。このステンドグラスの上には神様が居るって。 「あぁ、神よ。わたしに救いの手を」 ぐぅーんと。両手を天に伸ばす。背伸びをする時のように。目一杯空気を吸い込む。 「すぅぅぅぅーー」 眼を瞑り、またしばらくして息を吐く。 「ふはぁぁぁーー」 眼を開く。深呼吸。これが私なりの深呼吸。神様を崇めその空気を沢山吸い込む。そうして新しい日が始まる。良いことあるといいなって思える。 ステンドグラスのお花さんは今日も凜々としてて綺麗ね。 下を向くと小さな小人さんがこっちをじぃーと見ていた。 「あら、どうしたのかしら。迷い込んじゃった?」 体勢を下げてそう訊くとささーっと逃げて行った。 きっと忙しいのね。小人さんも気持ち良い今日の1日をどう過ごすか楽しみなんだわ。神様に忠誠を誓った私になら分かる。小人さんも他の小人さんもみんな今日という新しい1日をどう過ごすか楽しみにしてる。 あぁ、なんて気持ちいい朝なんだろう。まるで蕾から新しい花が開いたみたい。もう一度息を吸って息を吐く。新鮮な空気。おいしい。 さぁ、私の新しい一日はどう過ごそうかしら。楽しみ。 両手を目の前で組み今一度、目を瞑る。 「神よ。今日という新しい日が良い日になることをここに」 教会の入り口を見るとこちらに来る人影。 その手には私の好きな黄色い花。 「お客様だわ。お迎えしなきゃ」 シスターは修道服を翻し教会を出た。 ごみちりが舞う風。シャッターの閉まった商店街。ガラスが割れて戸は焦げて灰と化した住家。植物の垂れ下がる街の門。枯れた噴水。1輪の(しな)びた黄色い花。 そこにひっそりと立てられた墓は彼女のもの。 「はじめまして。ようこそ、わたくし達の庭へ」
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