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『初めてが無ければ、2度目は無い。それを未体験のまま我慢するのと、楽しさを知ってしまった上での我慢では、どちらが楽でしょう』
そういつも自分に言い聞かせてきた。
旦那に誘われても、友人に誘われても、旦那の親に誘われても…頑なに拒否してきた。
私は決してソレが嫌いなわけでは無い。むしろ、ハマる。
それがわかっている、自分の性格をよくわかっているから「初めて」を断固拒否する。
大音量に乗せて、銀の球が楽しそうに跳ねる、アレ。
そう、パチンコ。
「ビギナーズラックで絶対出るから〜」なんて誘いも、聞きません。
「タバコが苦手な女性にオススメの店舗あるよ〜」なんて案内も、聞こえません。
「俺、今日めっちゃ出たねんで」なんて自慢も、流します。
1回だけ…なんて、絶対自分には無理だから。
だから…
だから…
なのに。決意して50年。つい、旦那の病院の診察待ち時間に、旦那と2人で病院の近くのパチンコ店に入ってしまった。旦那自身も30年前に大負けして以来、パチンコは辞めていた。
店内に足を踏み入れたつもりだが、私は沼に足を踏み入れていた。
2人でパチンコに使う時間もお金も決めてから始めたので、さほど満足いく結果は出なかった。逆に、その結果が「今度こそ」という気持ちを引き起こす。
そうして沼に引きずり込まれていった。
旦那の入院のお見舞いで、1人きりの帰り道。
お店の音楽が、私を誘う。
決めたお金も時間も過ぎてしまう。
あぁ、どうしてだろう。携帯を忘れてしまった時に限って…病院から緊急の呼び出しがかかる。
「お母さん、こんな時に一体どこにいたのよ!」娘に非難される。
ごめんなさい、ごめんなさい…もう二度とパチンコはしない。
だけど…あと1回だけ。…負けを取り返すまで!
と、なるのが分かっているので「初めて」のパチンコは絶対にしない。
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